ケータイ小説 野いちご

花舞う街のリトル・クラウン

それでも何か言おうとする母を遮るように「まあ、どうにかなるだろって思ってるんじゃないだろうな」とリルの兄は釘を刺す。


「お前はそそっかしいんだ、色々と気を付けろ。特に金と体。金は言わずもがなだが、身体は本当に大切にしろよ。体調不良になったらすぐ休め。それから若い女は色んな輩に狙われることを忘れるな。それから…」


「ああもう、お兄ちゃん、分かったから」


延々と話続ける兄を止めると「お姉ちゃん、本当に分かったの?」と冷たい言葉が聞こえてきた。


「お姉ちゃんってドジでしょう?抜けてるっていうか…ドジだよね。アホではないとは思うけど、いやアホか。やっぱり間抜けだからさ」

「あんたって子は、この期に及んでまた姉を貶すような発言を…!」


旅立ちのときにまで姉を貶している妹にそう反論しようとしたところで「リル」と優しい声が聞こえた。


「しっかりな」


優しいけど少しだけ厳しい父のその言葉に、言い切ることのできないたくさんの意味が込められているのがリルには分かった。

その言葉を聞いて、母も兄も妹まで穏やかな優しい顔になる。


「はい、行ってきます」


大好きな人達に見せる最後の顔は、やっぱり笑顔がいい。


家族全員に見送られて、彼女の一生に一度の旅は始まった。



< 3/ 204 >