こんなに綺麗な生き物がいるのか。

彼を初めて見たとき、私はそう思った。


それはとてもよく晴れた日で、私が見つめていた青空に、彼はひらりと現れたのだった。


しなやかに宙を舞い、そのまま空へ溶けてしまいそうに見えた。


この人は、なんて軽やかに宙を舞うのだろう。

こんなに美しく空を飛ぶことができる人間がいるなんて。


私は息をのんだ。


その瞬間、恋に落ちた。


でも、

次の瞬間、恋は終わった。


『あれがね、あたしの好きな人』


私の隣に立ち、彼の姿をまっすぐに見つめながら、頬を赤らめて恥ずかしそうに笑う彼女の言葉を聞いてしまったから。


私の恋は、生まれたと同時に消えた。

しゃぼん玉のように弾けて、空へ溶けて消えた。



それでよかった。

私にとっていちばん大切なのは、彼女だから。