苛立つ気持ちを抑えて、穏やかに話を続ける。


「青磁の言いたいことも分かるんだけど、でも、クラスみんなでやらないと上手くいかないことだし……。それに、青磁にはまた他の仕事やってもらわないといけないから、そのときはちゃんと引き受けてくれないと」


青磁の神経を逆撫でしないように最大の注意をしながら言ったけれど、彼は苛立ちを隠さずに大きな舌打ちをした。

私は我慢したのに。


「俺の言いたいことも分かる、だって? 分かってねえだろ。ていうか分かりたいとも思ってないくせに、その場しのぎの都合のいいことばっかり言いやがって。気に入らねえ」


うぜえ、と吐き捨てるように青磁は言った。


どく、どく、と心臓が嫌な音を立てる。

どうして青磁は、こんなにもひどい言葉を次々と口に出せるのだろう。

私が傷つかないとでも思っているのだろうか。

それとも、わざと?


私はマスクを軽く押さえながら返す。


「私のことが気に入らないのは知ってるけど、でも、これは文化祭の話だから、理解してほしいな。私のことは置いといて、クラスのために、これからはちゃんと協力して欲しいんだけど、それでもだめ?」


顔色を窺うと、青磁は忌々しげに顔をしかめた。


「別にクラスの出し物の仕事やるのが嫌なわけじゃねえよ。ただ、主役なんてやったら、放課後に練習やら何やらで時間とられるだろ。それが嫌だったんだ」


私に言い聞かせるようにはっきりとゆっくりと、彼は言う。


「絵を描く時間をとられるのは我慢できない。俺にとって部活の時間は、他の何より大事な時間なんだ。その時間をとられないことなら、いくらでもやるよ」


それだけ言うと、青磁は迷いなくすたすたと教室を出ていった。