「……はい、もう反対しないところがティンの優しいところです」


「反対はしてる」


「ふふっ…でも協力してくれてありがとう」



ぎゅう、といたいくらいに抱きしめた。


「お前それ俺以外にやんなよ」

「あなた以外いませんわ」


愛を語るかのようなふたりの甘い雰囲気に、突如音が侵入した。


ホテルのスウィートルームへ上がるエレベーターが開く音。

チン、ととても小さな音だが、ティンが飛び起きる音である。


「…………来たな」

「ええ」

飛び起きたティンと、ゆっくりと起きてまぶたを擦るリル。


「ああ腫れちゃいますね、これ」

「終わったら蒸しタオルでもしとけ」


扉の前に行き、身構えるティン。

やがて悲鳴と、ドサッという体が倒れる音がしていた。


ルイが雇った護衛は時間稼ぎ程度にはなったようだ。


足音を耳をすませて確認すれば、4。

重い、安全靴。

鉄が入ってるので、腹に当たれば内臓が破ける。


「リル、4」

「あら、大金をはたきましたね」


予想の倍。


「全員は無理だ」

「そうですね」

さして慌てた様子はなかった。

そして、がちゃりとドアを開く音。