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3ヶ月だけのママ〜友達が妊娠した17才の夏〜【完結】


「わかったよ……」


 千奈美が溜め息をついて折れたのは、最初に声をかけてから何分経ってからだろう。
 クラスメイト達はみんな帰ってしまっていたけど、十分も経ってないんじゃないだろうか。

 覚悟の割には、あっさりだった。

 千奈美はけっこう押しに弱い。
 押されたら、最終的にはなんでも頷いてしまう。

 前からよくある光景あった。
 物の貸し借りとか、遊びに行く約束とか、時には宿題とか、掃除当番とか。
 クラスメイトとか先輩とか、いろんな人にいろんなものを押しつけられてしまう。
 なんとか押し返そうと努力はしてみるんだけど、最終的には押し切られてしまっていた。

 優しいばっかりに、やんわりと押し返そうとするからダメなんだよ。
 そう思いつつ、私たちもその優しさに甘えてきた。

 私と啓子ならスウィーツの店選びでケンカするほどなのに、千奈美は意見が対立しても折れてしまう。
 これで千奈美も意見を押し通すタイプだったら、三つ巴の戦いだ。
 千奈美がバランスを取ってくれるから、私たちはこれまで上手くいっていた。

 そんな千奈美だから、私たちもなるべくケンカしないで千奈美の意見も取り入れるようにしてきた。
 誰かに何かを押しつけられそうになってたら助けたし、押しつけられた後だったら手伝ってきた。

 でも、今回ばかりは、ごめんね。
 これも千奈美のためなんだって言い訳をして、千奈美の嫌がることをする。

 千奈美が取り付くし間もなく嫌だと拒否していたら、こうは出来なかったかもしれない。
 どんなに頑張っても二人がかりでも、本当に千奈美を拉致することなんて出来ないんだから。

 なのに、優しい千奈美はやんわりと拒否する。
 私たちが傷つかないように嘘の理由を並べ立てて、仕方なく断るんだよというスタンスを崩さない。

 毅然とした態度が取れない千奈美を不甲斐なく思う。
 その一方で、それが私たちに嫌われたくないという思いからくると思うと嬉しかった。

 でも、だからこそ。
 友達だからこそ、私たちは千奈美に嫌われてでもやらなきゃいけない。

 千奈美のことも、お腹の赤ちゃんも、このまま宙ぶらりんにしておくわけにはいかない。
 千奈美の妊娠を知っているのは、私たちだけなんだから。

 私は千奈美を連れて、啓子の家に向かった。

 啓子と千奈美の後をついて、最後に教室を出る。
 その時、不意に一つの考えが頭に浮かんだ。

 もしかして、千奈美は彼氏の夏樹くんともそうなのかな?

 好きで嫌われたくなくて、だから毅然とした態度が取れない。
 本当の気持ちがどうであっても、求められれば応じるしかなくなってセックスをする。
 その結果が今だとしたら……

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