「あの、これ……」

「なに?」


勢いでカバンからクッキーを取り出し差し出すと、彼は不思議そうな顔。


「チョコチップクッキーです。試合で感動をもらったから、お礼、というか……」


とても「好きです」とは言えない。


「このクッキー、チョコちゃんが作ったんだ」

「はい」

「すごくおいしかったから、うれしいよ。ありがと」


意外にもあっさり受け取ってもらえてホッとした。
こんなことされたら困ると突き返されたらどうしようかと思っていたから。

しかも『おいしかった』なんていう褒め言葉つき。


「それじゃ」

「うん」


今度こそ彼は歩き始めた。


「チョコちゃんだって……」


勝手に頬が緩んでくる。
さっきまで寒くて仕方なかったのに、今は体がホカホカだ。

恋心は伝えられなかったけれど、大満足だった。