「なんだ、天満を待っていたのか?」


先生のその一言に、金縛りが解けた。


「そ、そうなんです!」



咄嗟に嘘をつくあたし。


「待ってるなら言ってくれればいいのに」


窓を開けて颯がそう言う。


「あ、えっと……邪魔になったら嫌だなって、思ったから」


ぎこちない笑顔を浮かべるあたし。


「そんな事気にしなくていいのに。ほら、帰るぞ」


そう言い、教室を出てあたしの鞄を持つ颯。


よかった……バレてない……。


あたしはホッと胸をなで下ろす。


「どうせだから、何か食って帰るか」


「う、うん」


並んで歩きながらあたしは颯に違和感を覚えていた。


何かが違う。


なにが? と聞かれても答えられないけれど……。


長い間颯だけを見て来たから、なんとなくわかる。


「……颯、今日なんだか雰囲気が違うね?」


そう聞くと、颯はあたしを見て首を傾げた。


「は? そうか?」


「……ううん、やっぱりあたしの気のせいかも」


あたしはそう言い、笑顔になる。


せっかくデートになったんだから、機嫌を損ねるような事をする必要はない。


帰ってからじっくり監視カメラを見ればいいんだから……。