☆☆☆

映画は噂話通り、つまらないものだった。


豪華なタレントが出演しているものの、内容が難しすぎてどんどん眠たくなってしまう。


「なんか、わからない映画だな」


しばらく黙って見ていた颯だけれど、そう言って欠伸を1つした。


「ごめんね。面白いって聞いたんだけど、おかしいなぁ」


素知らぬ顔をしてそう言い、あたしは颯の手を握った。


そしてそっと颯の耳に口を近づける。


「ね、見てあそこのカップル」


そう言い、そっと指さした先にはキスをしているカップルの影。


「まじか……」


驚いた声を出す颯だけれど、あたしの手を握る力が強くなった。


「映画館の中でキスしちゃう人っているんだね」


そう言い、スッと身を引こうとした瞬間……颯の両腕にスッポリと包まれていた。


久しぶりに感じる颯のぬくもり。


「キス……する?」


耳元でささやかれる。


あたしは返事をする代わりに、目を閉じた。


そして、颯の唇を感じたのだった。