初めて生まれてくる感情に、戸惑い恐れを抱いた。



「おれは、母上のために・・・戦わないといけないんだ。なのに・・・。だから、蒼子を返したのに・・・。どうして戻ってきたの。どうしておれを助けたりしたの」




白玖の瞳はひどく揺れていた。
そんな白玖の姿は、長く側にいる多々良でさえ初めてだった。




「・・・心配だったから。白玖に、生きていてほしいから。怪我をしてほしくないから・・・」



そんな白玖に、想いを紡いでいく。
蒼子はゆっくりと想いを言葉に乗せ、伝える。




「私が、白玖の側にいたいと思ったから」




蒼子がはっきりとそう告げると、白玖はグッと拳を握り、次の瞬間蒼子の身体を抱きしめていた。
傷口が完全に治っていない蒼子は、痛みに顔をしかめるが、白玖の思いを受け止めるようにそっとその背中に手を回した。




「蒼子・・・」

「うん・・・。白玖は、心を持ったっていいんだよ。感情だってあって当たり前なの。消したりしないで。白玖が想った事、感情を私に教えてほしい」

「蒼子」

「そうしたら、私がその感情の名前を教えるから。一緒に、知っていこう?」




知ることから逃げないで。
恐れないで。
そう蒼子は続けた。