渉のうめき声やひっくり返る音が聞こえると思ったのに。
ゆっくり目を開けると、圭太のパンチを顔面の寸前で、受け止めてる渉がいた。
手のひらで。
う、うそお!?
「……っ……なにモノだ、オマエ……」
それには圭太も驚きを隠せないでいた。
クラスメイト達からも、”おー”なんて声が聞こえる。
圭太は相当喧嘩が強いってお兄ちゃんが言ってた。
その圭太に、対等に張り合うなんて……!
「おう!お前が久郷渉か!」
その時担任が教室に入って来て、嬉しそうに声を張り上げた。
一気に教室の空気が変わり、みんなもバラバラと席に着く。
渉も、唖然としている圭太を一瞥すると、なにごともなかったように椅子を引いて席に座った。