ケータイ小説 野いちご

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in the クローゼット


「うん、すぐに帰ったよ」


 私がキスしようとしたことを、舞に知られしまうわけにはいかない。

 決して。


「そっか。一回目が覚めたときに愛ちゃんがいたような気がしたんだけど、気のせいだったのかな」


 深く追求してこない舞に私は安心して息を吐く。


「もうすぐクリスマスだね」


 もうその話から逃げたくて、別の話題を持ち出す。


「だね。冬休みになったら、遊び行こう!」

 「うん。どこへ行こうか?」と私が言うと「そうだなー」と舞は考えだす。

 もう保健室でのことについては触れられなかった。

 舞の頭の中が冬休みの予定でいっぱいになって、保健室で私を見た気がすることさえ外へ追い出して忘れてしまえばいい。


「やっぱりお買い物かな」

「欲しいものあるの?」

「そういうわけじゃないんだけどね」


 何気ない舞との会話をこなしながら、私は静かに震えていた。

 私は、あのとき確かに舞にキスをしようとした。

 キスしたいと思った。

 思っている。

 好きな人に触りたい、抱きしめたい、キスしたい。

 そんな健全な感情。

 なのに、私は強い抵抗感と罪悪感を抱いている。

 そんなことを思う自分を否定したい。

 どうして?

 それは、舞も私も女の子だから。

 いつか私は、舞とキス以上のこともしたいと思うようになるのかな。

 それを考えると、足がすくんだ。

 楽しそうに遊びの予定を立てる舞の声が、どこか遠い世界から響いてくるようだった。

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