「楓くん!」

「山崎監察!」


あたしの名を呼んで走ってきたのは、黒い忍び装束を着た山崎監察だった。


「伝令や!敵が……長州のやつらが……禁裏に発砲しよった」


「えっ!」


「なんだって!?」


いつも冷静な山崎監察も、さすがに厳しい顔をしている。


尊王のはずの長州が、天子様のいる御所に大砲を打ち込んだらしい。


あたしのそばにいた総司も、目を丸くした。


「許せねえ……結局あいつらは、天子様を利用するつもりしかなかったんだな」


「とにかく、ここはもう捨てておいて、全軍御所へ向かえとのことや。

局長や副長はもうそっちに急行する準備をしている」


「はい」


「俺はこちらの隊士たちをまとめる役を負った。

キミは屯所へ走って、山南副長と藤堂くんにこのことを伝えてくれ。

動けそうな人員は、すべて御所へ急行するように!」


山崎監察は早口でそう言うと、風のように駆け抜けていってしまった。