「でも、あんた、意外と余裕じゃない。
こういう時は、もっと泣きわめいたりするもんじゃないの? フツー」


余裕じゃないから余裕のフリをしたい、微妙なお年頃なのです。
30にもなったら、丸くもなるのです。



「あ、そっか。
私ら、もうそんな年じゃないね」



さすが親友。
同じ青春を駆け抜けてきた友。



「泣いてわめいて、なんて、疲れるだけでさ。
カッコ悪いし……」


「わかるわかる。
怒るのにエネルギーが要る年だもんね」


「……そう、だけど、ね」



そう、だけど。
本当は泣きわめきたいんだ。
それで拓の気持ちを繋ぎ止めておけるのなら。



「あんたも苦労するね」


「……なんたって、カレシが芸術家ですから」


そう、彼が愛するのは私でもなく紅でもなく。
自由と衝動。
それに伴う芸術活動。

オンナ遊びも芸の肥やし?
そんなものは、色欲バカの言い訳です。
生物学上どうかなんて、理性ある動物の私らには関係のないこと。

浮気は浮気。
撲滅だ。



「ともかく、瑞季。
ハッキリさせなさいよ?」


そう言う明日香の言葉に、

「うん、そだね」

今度の私は大きく頷くのでした。