重なる私と坂下さんの唇。目を開けたままの私は坂下さんの顔を超至近距離で見ていた。


目の前には私がどれだけロングラッシュのマスカラを塗っても、届かないレベルの長いまつげがそこにはあった。


ゆっくりと、坂下さんは離れると


「これで分かった?僕が誰を好きなのか。」


「えっ……。好き……なの、か?」


「まだ、わかんないならもう一度ーーーー」


と、また顔が近づいて来たので、慌てて言う。


「わっ、わ、かりましたっ!」


てゆーか、坂下さんって結構、強引な人なの?


にしても、本当に社内一のイケメンが私のことをーーーす、き?


それに突然のキス…


いやいや、ないって、信じられないよぉ~。


何かの間違いじゃないのかな?


それともーーー


「夢じゃないよ。」


と、ほっぺをつねろうとした、私の手を取り、指を絡める坂下さん。


っ…て、照れるんですけど。


「僕が好きなのは君だよ。村崎さんのことが好きなんだ。」


「ほ、本当に?」


「ああ、本当だよ。君が会社に入ってきた時に、会ってすぐかわいいなって。一目惚れだよ。それから、気になってずっと目で追ってた。君はちっとも気づかないけど。」


「一目惚れ……。」


「それで返事は?良い返事しか聞きたくないな。確か彼とかいないよね?」


「彼……ですか?」


一瞬、和菓子職人の顔が浮かぶ。


サトルさん。


「もしかして、誰かいるの?好きなやつとか?」


「好きな人はいません。」


即答した。あんなやつ好きじゃないもん。


「じゃあ問題ないよね?」


問題……あります。


ため息の原因になってる面倒な問題があるんです。


って、言えないよね。


「少し、考えてもいいですか?ちょっと、驚いちゃって。突然だったから。」


「そうだね。ごめん、僕もつい気持ちが先にいっちゃって、そのつい……。だけど、僕は真剣に村崎さんの事が好きだから。キスだって誰にでもする訳じゃないから、信じて欲しい。兎に角、落ち着いたら返事聞かせて。」


そう言うと、坂下さんは休憩室を後にした。


また一人になって静まり返る休憩室。いつもは必ず誰かしらいるのに、何で今日に限って誰もいないんだろ……。



にしても……。


ど、ど、どうしよぉ~。


ってゆーか、彼氏いない歴=年齢の私が昨日、今日で
いきなり二人の人とキスするなんて…………。しかも当然と言うか昨日はファーストキスだったし……。


昨日とさっきのキスシーンが頭を過る。


ぅわぁ~~~っ!


もう、何がなんだか分かんなくなってきたぁ~っ!