戸口に立って、そぉー……っと、教室の中を覗く。

窓際の一番後ろ。
その席の主は、まだいない。

友達とも……喋っていない。

どうやらまだ、来てないみたい。
よし、今のうちに……

と、教室に一歩、足を踏み入れようとした時だった。


ピタッ。
ヒヤッ。


「ひあっ!」

首筋に、急に冷たい何かがあたって、あたしは思わず仰け反った。

冷たさの正体。
それは、紙パックのイチゴオレ。

朝っぱらから、そんなものをあててきた犯人は……、


「朝日っ!」


イチゴオレの向こう側。
見えた顔にドキッと、心臓が止まりそうになった。


「はよ」

「おはよ……って、やめてよ! 寿命縮まる!」

「ちょっと縮まったくらいが、ちょうどいいんじゃねーの?」

「はぁっ!?」

大きな声を上げて、朝日を睨みつけるあたし。

するとそこに、

「また痴話ゲンカぁ? 仲がよろしいことで」

クラスメートの女子が、ニヤニヤしながら喋りかけてきた。