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「棗様ー!起きてくださーい!」




私は大きなベッドで優雅に眠る棗様の肩をゆさゆさと揺する。


今日は学校の日だから、遅刻させない為にも必ず起こさなければならない。

…でもなかなか起きないのが棗様。




「……んー」



と、眠そうに発せられた声に、私は目を輝かせた。




「棗様!朝です!学校ですよーっ」


「…………」




よほど嫌なのか、棗様は眉間にしわを寄せたまま布団を深く被った。


ちょ、ちょっと!




「…花。制服と学校の用意準備して。…俺はあと5分寝るから」




は、はい!?


慌てる私を気にも留めず、棗様はまたすやすやと眠り始めた。



…私、まだ棗様の部屋把握出来てないよ…。


ど、どうしよう。


学校の用意とか何がいるの!?

どこにあるの!?



あわあわと慌てふためく私は、傍からみれば実に滑稽だと思う。



と、

突然部屋をノックする音が聞こえた。




「失礼致します」




ドアが開くと同時に現れたのは、なんと有馬さんだった。


有馬さんは部屋に入ると、淡々とした足取りでクローゼットに掛けられていた綺麗な制服を取り出し始める。


あっけにとられてただ突っ立ったままの私なんか気にもせず、有馬さんは私の代わりにあっという間に学校の用意を準備してしまった。