「……え」


「さっきの柴咲って奴が言ってた、〝比乃〟っていうのは君かな?」





ちらりと向かいの席のみっちゃんを見て助けを求めると、みっちゃんは私を見つめたまま小さく頷いた。






「は、はい……」


「へえ…何組?」


「あ、2組です…」


「そっか、ありがと」







そう爽やかな笑顔を向けてくれた室谷先輩。



すると次の瞬間。

片手を上げたかと思えば、先輩は優しく私の頭を撫でてきたのだ。




背後からは甲高い女子達の悲鳴が聞こえる。




……や、やばい!

これがきっかけで目をつけられた私は、女子トイレに呼び出されたりして女子達にフルボッコにされちゃうんじゃ……!






「え、なんでそんな怯えてるの?」




喜ばないの?とでも言うように先輩は私の顔を覗き込んでくる。



だ、だって!

自分の未来が心配ですもん!






と、





バシッ。


「いてっ…」






突如、室谷先輩の頭に飛んできたパンが直撃した。


チョコチップメロンパンはそのままどさりと先輩の背後に落ちる。







「せっかくのパンが台無し」





いつの間にかそこに仁王立ちする黒髪の少年がいた。


たっぷり先輩を睨む彼は、紛れもない刹だった。


先輩の頭にパンをぶつけた犯人だとすぐに分かる。






「……君何がしたいの?」





ざわざわと騒ぎ出す食堂。


な、なんか今にも喧嘩勃発しそうなんですけど!?