和泉くんの部屋は、本当にあの橋からすぐ近くにあった。
歩いて五分かからない程度の距離に……明らかに家賃が高そうな高級物件が。

知ってる、ここ。
この周辺でも異常なほど目立ってるから、多分知らない人はいないってほどのマンションだ。

何度か通った事あるけど、通りかかる度にキレイでおしゃれでお城みたいだなって思ってた。

キレイなエクステリアやエントランス、エレベーターホールを眺めながら、和泉くんの家が経営する会社が結構大きかった事を思い出した。

確かハウスメーカーだった気がする。
戸建だけじゃなくて、アパートやマンションも手掛けるような……もしかしてここも和泉くん一家の建築した物件なのかもしれない。

だって、どう考えたって二十代前半の人がひとり暮らしに使えるようなマンションじゃない。
家賃を考えただけでぞっとする。

キレイな間接照明がところどころに自慢するようにたくさんあるけれど、こういうのも家賃を釣り上げる原因になるし、キレイ……なんてうっとりしてる場合じゃない。

乗り込んだエレベーターも品があって、少し洒落た造りをしていた。
紺色の絨毯に同じ色の壁。そこに金色のラインが入っていて、それは洋書の表紙を思い出させた。

なんなんだろう、このマンション。コンセプトは何でどの層がターゲットなのか全く分からない。