それからダラダラと数週間が過ぎた。
街はクリスマスムード一色で、年末の慌ただしさが漂っている。

元来面倒臭がりな私は、お見合い写真のこともすっかり忘れてしまっていた。
相変わらず拓の気配の残る生活に身を置いたまま、寂しい日々を過ごしている。


そんな時。
ユリエさんからお見合いの返事を催促される前に、絶妙なタイミングで事務所のコピー機が壊れた。



「あら、嶋田くんに来てもらわなきゃ。
瑞季ちゃん、ちょうどいいから、彼と少しお話してみたら?」



ウンともスンとも言わないコピー機を覗き込みながら、ユリエさんはけれど、ウキウキしている。



「はあ……」


「ほら、化粧直しくらい、しておきなさいよ。
でも、あんまり気合いが入りすぎても、よくないからね」



直すほどの化粧もしていないのだけれど、ユリエさんからそんなアドバイスを受ける。
ユリエさんはまるで自分がお見合い相手と会うかのように、ドキドキソワソワし出した。

……むしろあなたの方が気合い入りすぎだと思うのですけど。


嶋田くんは夕方寄ってくれることになったらしい。
ついでにお茶でもゆっくり飲んでもらって、と、ユリエさんは事務所の掃除まで始めてしまった。
自宅に戻ってパウンドケーキを焼くなどと言っている。
瑞季ちゃんのためだもの、と、ユリエさんは少し恩着せがましい。
嫌ではないけれど、やっぱりちょっと面倒臭いなあ、と思う。