ボーリングにバッティングセンター。
カラオケにビリヤード。

何でもありの1日になった。


嶋田くんはよく笑っていた。
ガーターを出した私を見て。
空振りをする私を見て。
演歌でこぶしをきかせる私を見て。
玉を突けない私を見て。

私も嶋田くんを笑わせたかった。
だからいつもより、ちょっと下手くそにボールを投げたり、調子に乗ってみたりした。


無理矢理にでも笑ってみると、人って案外元気になる。

現に私は元気にしゃぶしゃぶを食べて、クリスマスケーキを平らげて、シャンパンまでご馳走になった。





「今日はありがとう」



外はもう真っ暗。
風が冷たくて、今にも雪が降り出してきそうに寒かった。

マンションの前。
私はボルボから降りて、笑顔で嶋田くんに手を振る。



「こちらこそ、楽しかったよ」



嶋田くんも運転席から私を覗き込んで、笑顔を見せてれた。



「また誘ってもいいかな?」


「もちろん、です」


「連絡するよ」


「はい」


明るく返事をする。
気持ちがまだ、フワフワとしていた。

私の中で蟠っていた悲しみは、体の疲れとともに流れ出してしまったらしい。
嶋田くんの言う通り、モヤモヤしている時には、体を動かすのが一番いいみたいだ。



「じゃあ、また」


「はい、また!」



赤いボルボが闇に消えていくのを、手を振りながら見届ける。
ウィンカーが点滅し、テールランプが消える。

さっぱりした気持ちでポケットに手を入れると、スマホがブルブルと震え出した。
映画館に入る時にマナーモードにしたまま、すっかり忘れてしまっていたのだ。