珍しく夜に開けた窓から涼しげが風が吹いてくる。

熱い夏が終わって、もう秋なんだなぁと感じる日々。


あなたと目が合わなくなって、触れ合えなくなって、後悔ばかりして。

巡る季節と、止まった時。


「ねぇ、天青。もう秋だって。
今日は中秋の名月らしいわよ」


返事がある訳もなく、無音の中、わたしは苦い表情を浮かべた。


そっと冷たいガラスに手をあてる。

予想よりひんやりした感覚に、一瞬びくりと指先が震える。

じわじわとわたしの熱と混ざり合って、同じ温度になっていくのがわかった。


「あなたといるのに一緒に過ごせない季節は何度目かしらね」


溶けてなくなりそうな月の光が部屋に満ちている。

いくつかの光の筋が時計に当たり、淡く照らされた。


月の光に隠してでも、口にしてはいけないような。

そんな風に感じて言葉を使えず、わたしはただただ立ち尽くしていた。


あまりにも綺麗な月に、心が呑まれた。

そんな、16歳のわたしの、とある年の秋の日。