(零、二)


「幼少期に虐待される子供の多くは、決して親を憎まない」


「逆上しても良さそうなもんだけどねぇ。ガキだろうがなんだろうが、その気になりゃあ、虐待する相手に復讐でもできんのによぅ」


「ないな、あり得ない。子供はどこまでも無垢であり、弱い。虐待される痛みを痛いと感じる一方で、『これはボクが悪いから』と虐待の正当化をしてしまう」


「躾と虐待の違いの話か?んなもん、殴られたかどうかで決まんじゃねえの」


「虐待がすべて暴力によるものとは限らない。精神的なものから、はたまた世話の放棄――子供に無関心な親の姿というのもかなりのストレッサーだ」


「ああ、あいつは怪我しねえか、確かに」


「あいつ?」


「気にすんな、続けろよ。虐待される子供の心理ってやつを。医者のてめえなら分かるだろ?」