あたしは湯呑みを持った手を膝の上に置き、深呼吸を1つした。


「あたしの、勘違いかもしれないけど」

「あぁ」

「最近…付けられてる…ような」


そう言うと、あたしと男の間に沈黙がおちる。

男は扇子をパチンと閉じて、あたしに向けてきた。


「自意識過剰なんじゃないのか?」

「失礼ですね!」


なんて奴!!
たしかにあたしは眼鏡かけて地味だし顔の造りも良くないし、スタイルだっていいわけじゃない。

だからって…
人の悩みを「自意識過剰」の一言で…!


「真剣な悩みなんですが!」

「あー、親にはそれを言ったのか?」

「言ってません」

「何故。一番に言うべきだろう」


何故と言われても…。
あたしは俯く。


「親とは…、進路のことで衝突してて。こんなこと話しづらくて」


ただでさえ、医者の仕事で忙しい両親。

夜勤が多く、なかなか会うことがない。