「遼。これ、バレンタインのプレゼント」


私は二つの包みをテーブルの上に置く。

一つは皆と同じトリュフで、もう一つは遼の好きなミステリー小説。

まるで本命みたいなプレゼント。


陽介にはチョコレート一つだけだったけど、気にする様子もなく窓の方に顔を向けてあくびをしている。

陽介は、私が遼のことを兄のように慕っているのを知っているから。


「ありがとう」


遼は私に向けて、優しく微笑みながら受け取った。


「遼もプレゼントなんて、たくさんもらうんだろうけどね」

「たくさんなんてもらわない。……紗矢花からのが一番嬉しいよ」


微笑みの色を映していたはずの瞳が、一瞬、悲しげな色に変化したのは気のせいだろうか?

あくびをやめた陽介が遼の方を見る。

私が何か言おうと口を開いたとき、突然陽介のスマホから、着信音が大音量で鳴り響いた。