お婆さんは日の大半をベッドの上で過ごしていた。

歩けない訳ではない。
骨折から寝たきりへ。というスタンダードコースを通り、
寄る年波に勝ち再び立ち上がる為の気力が殺がれる程には弱っていた。

日がな一日ベッドの上でテレビか庭を見ていて、
手洗いぐらいしか自発的に動くことはなかった。


お婆さんはふと目を覚ました。
眠ってしまっていたらしい。
室内は暗く、閉まっている障子の向こうは明るい。
ただ、室内の暗さは闇の暗さで、外の明かりは障子の下に影を作っている。
もうすでに日は落ちたようだ。


障子を開ければ夜の庭が見えるはず。
家の者を呼んで開けて貰おうか。
そう思った時だった。