【奈緒SIDE】


いつの間にか、あたしは亮の腕の中にいた。

泣く事に精一杯で……、いつ抱き締められたのかも気付かなかった。


……さっきまで泣いてたのが嘘みたいに、心の中が穏やかだった。


「……亮?」


亮の腕の中から、遠慮がちに声をかける。

その声は、自分でも驚くほどに掠れていた。


気付いた亮が腕を緩めて、あたしのおでこに自分のおでこをくっつけた。

泣いていたせいで、あたしの身体はすっかり熱を持っていて。

亮の冷たいおでこが気持ちよかった。


「……落ちついた?」


亮が優しく話しかける。


「うん……あの、亮?」

「何?」


いつもより優しい亮の口調に少し戸惑いながら口を開く。


「……近くない?」


恥ずかしくなりながら言うのを見て、亮が意地悪に笑う。


「……別にいいだろ? キスもした仲じゃん。

……もう一回する?」


亮がニっと口の端を上げて笑み作って、顔を近づける。