女性が連れてきてくれたのは近所の喫茶店だった。


こげ茶色を貴重とした店内の雰囲気は落ち着いていて、もう何十年も前からここにあることが伝わってきた。


「私は森安さんの隣の家の桃田里美」


コーヒーを一口飲んで女性は言った。


「で、なにが聞きたいの?」


「文隆さんのことなら、なんでも」


俺は女性の言葉を聞き逃してしまわないよう、スマホで録音しながら会話を進めた。


「私と文隆は同級生だったの。私は隣町の高校までバスで通学していた」


昔を懐かしむように話す女性。


「文隆さんの学生時代って、どんな様子だったんですか?」


聞くと、女性は少しだけ顔をしかめた。


あまりいい記憶がないみたいだ。


「文隆はね、病気だったの……」