「へえ。エナちゃん、ミスコン出ることになったんだ」

「学食無料クーポン10枚にまんまとつられてました」

「ああ。でもあれ、確かにもらえるとかなり助かるよ」




時は流れて、あっという間に秋も終わりにちかづいていた。




ベットを背もたれ代わりにして座り、「エナちゃん優勝してほしいなー」とどこか他人事のようにそう言った先輩。


そんな三琴先輩のとなりに座る私は、「そうですね」と短く返事をして先輩がいれてくれたホットココアに口をつけた。




先輩の彼女になって2か月。



先輩は、彼が10歳の時に病気でお母さんを失くしてからお父さんと2人暮らしをしているらしい。




お父さんは仕事でかえりがおそいことがほとんどなので、中学生のころから頻繁に自炊をするようになったと教えてくれた。



この部屋に来るのは初めてではなかった。




最初に来たのは1週間前。


三琴先輩の推薦入試が終わり、受験勉強からひとまず解放されたタイミングでのことだった。