「花音ちゃんって、結構不器用だよね……」
茶こしでパタパタとココアパウダーをふっていると、そう声をかけてきたのはひかり。
その手には、綺麗な黄色のプリンが6つほど乗ったお盆。
ほんのりとハチミツの良い香りがする。
何か言い返す言葉はないかと思ったけれど、ひかりはそのプリンの上に生クリームを絞ってイチゴをトッピングしていて、その手際の良さにぐっと言葉を飲み込んだ。
あたしの目の前には、丸……とは言い難い、歪な形のトリュフ。
不器用……と言ってくれているのは、まだ優しい方かもしれない。
「な、慣れてないの! お菓子作りとか、ほとんどしたことないし!」
「うん。でも、その慣れてないお菓子作りを、中村くんのために頑張ろうと思ったんだよね?」
ニッとからかうようにひかりに笑われて、あたしはカアッと赤くなる。
「うっさい! そんなことより、なんでバレンタインなのにプリンなの?」
何とか話を逸らしたかったのと、純粋に疑問に思っていたことを、ひかりにぶつける。
……そう、明日はバレンタイン。
だからあたしはこうして慣れないながらも、ひかりに教わってトリュフを作っているというわけ。