後方を確認してみても、そこには人の顔のようなシミや汚れは見当たらなかった。


ただ、灰色の塀が広がるばかりだ。


ゾクリ。


また、あの寒気が背筋を撫でていく。


あたしは身震いをして塀から離れた。


「大丈夫か?」


知樹があたしの肩を抱いてくれるが、一向に寒気は消えてくれなかった。


結局、あたし達はそのまま家に帰ることになってしまった。


あの写真を見た後じゃ、直弘も口数が少なくなっていた。


「大丈夫だって、気にし過ぎはよくない」


知樹が家まで送ってくれた別れ際、そう言ってあたしの頬にキスをした。


嬉しいはずなのに、あたしの心は沈んだままだった。