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この世界で初めてタコ焼きを作った日から、二週間ほどが経つ。

今日のミーナは治癒院に来ている。

近頃どうも体がおかしいのだ。


ライアスたちは週の半分ほどレストラン・ルーブルにやってきて食事をするのだが、彼らを……いや、ライアスを見るとミーナの鼓動は勝手に速まる。

元より見目好い青年なのはわかっていても、口の横にご飯粒をつけた彼が眩しく見えるのはおかしく、目の異常ではないかと彼女は考えている。

熱っぽい気もするし、どうにもおさまらない動悸は心臓病のサインかもしれないと不安を覚えていた。


それでミーナは厨房に立ちたいという欲求を堪えて、治癒魔導師の診察を受けに来たのだ。

娘を心配したジモンも、店のことはアマンダに任せて同行している。


ここは六角形の白い小部屋で、床に魔法陣が描かれており、ミーナが知っている診察室とはかなり異なった様相である。

魔法陣の中心にはひとり掛けのソファが置かれていて、ミーナは水晶玉を膝にのせられ座らされていた。

白い法衣を着た治癒魔導師の男性がミーナの前に立ち、短い杖で彼女の体のあちこちに触れて状態を探っている。