おばあちゃんはあの事件が起こってから日に日に衰弱していっていたそうだ。


まるで自分のやるべきことを終えたように、毎日穏やかに過ごし、最後の瞬間を待っていたそうだ。


そして、今日はそんなおばあちゃんの葬儀の日だった。


葬儀に出席するのはこれで3回目か……。


俺は11月の空を見上げた。


冷たい風が吹き抜けていき、首をすぼめる。


参列者の中に、新宮高校の制服を着ている生徒を見つけた。


古家先輩だ。


先輩は俺の前まで来ると、深くお辞儀をした。


俺も、お辞儀を返す。


「素敵なおばあちゃんだったのにね……」


古家先輩の声はかすれていて、目には涙がたまっている。


先輩にとっても俺にとっても、おばあちゃんは命の恩人だった。


「もう一度、ちゃんと会ってお礼がしたかった……」


「仕方ないよ。事件のあった場所になんてなかなか行けれるもんじゃないから」


俺はそう言い、先輩の肩を叩いた。