いつのまにか眠りについたあたしが、カーテンを通さない直射日光に目を開けると、隣では樹がまだ寝ていた。

小さく寝息を立てる姿が、いつもより子供に見えて可愛い。

……あたし、本当に何やってんだろう。

彼氏でもない人と同じベッドで寝て寝顔なんか眺めて和んじゃって……


でも樹も樹だ。

花の女子高生と一緒に寝ておきながら手も出してこないなんて。

……出されても困るけどさ。


すやすや眠る樹をベッドに残し、あたしは背伸びをして寝室を出る。

鞄に入れっぱなしのケータイを眺めてから……またケータイを鞄に突っ込んで冷蔵庫を開けた。


 ※※※


「瑞希……どうした、これ」


30分ほどして起きてきた樹が、信じられないといったように表情をしかめた。

その視線の先には、あたしの作った朝ごはん。


フレンチトーストに、カリカリベーコンにトマトとツナのオムレツ。

デザートには桃缶を開けて、ヨーグルトをかけた。


樹って結構自炊しているみたいで、食材の揃った冷蔵庫がそれを教えていた。


「どうしたって……作ったんだけど?」

「……誰が?」

「あたしがだよ。……ってゆうかしらじらしいボケ止めてよ。信じられないかもしれないけどあたしが作りました。

はい、顔洗ってきて。早く食べよ」


樹の背中を押して、行動と言葉で洗面所へと促す。

樹に触れた手の平が、樹の体温を身体へと流し込んできて……不思議な気分。


さっきまで寝ていた樹の身体は温かくて……

触れた場所から感情が溢れ出すような、嬉しさが湧いてくるような……


「なんだよ」

「え、あ……なんでもないっ」


いつまでも背中に手を押しつけていたあたしを、樹が不思議そうに振り返る。

そんな樹にはっとしたあたしは樹の背中を最後にドン、と押してくるりと背中を向けた。


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