「あ、あの子でしょ? ちょっと顔がいいからって調子乗んなだよね」

「隣の子は幼なじみらしいよ。絶対頼んで仲良くなったよね」

「うわ、ずるーい!」


聞こえるように言っているのか、いないのか。

ヒソヒソと周りから聞こえてくる声に、言い返したい気持ちをぐっと堪えて廊下を歩く。


「ゆづ、大丈夫?」

「うん、平気」

授業道具を抱え隣を歩きながら、心配そうに顔を覗き込んできたありさに、笑顔で返す。

内心、すごくイライラしているけれど。


あれから、篁くんが女子達に近寄って来るな宣言をしてから数日。
教室を一歩出ればずっとこんな感じで……慣れたと言えば、慣れた。


私は別に何もしていないし、篁くんとの関係も特に何も変わっていない。

だけどあの時、ノートを貸してと言われたのが私で。
そのすぐ後に『近付きたい女くらい自分で決める』なんて言うから、近付きたい女=私、みたいな感じになってしまった。

噂が広まるのはあっという間で、篁くんが急に女の子と遊ばなくなった原因は私……みたいになっている。