あいつ、圭太も片親なんだ。



半年前までの私と同じ。だけど、楽しそうだった。



仲の良い母と息子の光景が、まぶしかった。


うらやましいと思った。




「愛美ー。東高の友達が愛美のこと紹介してほしいって言ってるんだけど……」


「んー。今はいいや。そういう気分ないし」


「そうだよね。ごめん」


「ちょ、謝んないでよー! 本当に今、彼氏いらないだけだから」



次の日、遅刻で行った高校での昼休み。


私は心配そうな顔をしている友達に軽い口調で答えた。



彼氏か。無理だな。



右の袖をまくり、金色の光を見る。



お兄ちゃん以上の人なんていない。


私に近づいてくるのは自信過剰な人やチャラい男が多いし。



まあ、あいつ――圭太はちょっと面白かったな。



『何してんの?』



圭太にラインを送ると、『学校』と返ってきた。



『昼休み?』


『そうだよ。そっちは?』


『私も。今日夜何してんの?』



そう送った後、いくら待ってもスマホが鳴らない。


あれ。返信が途絶えた。



仕方ないか。



私はあいつが持っている罪悪感を突いて、お兄ちゃん以外の居場所を確保してしまった。


圭太の純粋そうな心に付け込んだ、私の心は本当に汚い。