ついに土曜日が来てしまった。
これほどまでに目覚まし時計の音が煩わしいと思ったことはない。

布団に顔を埋めたまま手探りで時計を探し、勢いよくボタンを止める。
途端に辺りは静けさを取り戻し、冷蔵庫の低音と微かに鳥のさえずりが聞こえるだけになった。

少し日焼けしたカーテンの隙間から、眩いくらいの光が射し込んでいる。
嫌になるくらい気持ちのいい天気だ。

「あー……」

いつもの休みなら布団に入ったままテレビを付けて、ぼんやり見ながら二度寝して、なんてぐうたらな時間を過ごすのに。
休みの日に出掛けるって、しかも男とふたりでなんて、一体何年振りなんだろうか。

重い身体をなんとか布団から引きずるようにして、這い出て、頭を掻きながら水を飲む。
途中壁に掛けてある鏡に自分を映した。

まあ、なんてだらしないんだろうか。自分でもビックリするくらい。
髪はボサボサ、寝起きの顔は年より老けて見え、酷すぎて人様に見せられるものではない。


仕事中だって、汗をかくからって化粧もしていないから、大概なもの。
なのに、どこを奴は好きになったんだろう。

私が男だったら、間違いなく私は選ばない。
だって、女らしさのかけらがこれっぽちもないんだもの。

「ホント不思議な人……。さて、シャワーでも浴びるか」


シャワーを一通り浴びてサッパリしたあと、顔の手入れをして軽く化粧をする。
いつもは自然乾燥の髪の毛も、久々にドライヤーで乾かす。

けれど服はいつも通り、フード付きのトレーナーにジーパン。

こんなときに、気合入れるのもなんかおかしいし、変にスカートでも穿いていってあっちが変な気を起こしても嫌だし。
その前にスカート似合わないし、さらにその前にスカートなんて、就職活動用のリクルートスーツのスカートしかないし。

別にデートなわけじゃないし。
ただ岡田さんに付き合って遊ぶだけだし!

……って、なに自分に言い聞かせてんだろうか。
何故か少し舞い上がっているようだ。


「落ち着け自分。友達と遊ぶのとなにも変わらない!!」

そう。

ただ岡田さんと休みの日に会って遊ぶだけで、それ以上はなにもないはず。
いつも通りの自分で行けばいい。

ただそれだけ。