夢を見ていた。



 それが夢だと、リーラは夢を見ながら知っていた。



 まだ十にもならない幼いリーラは、庭で摘んできた白い花で花冠を作っていた。



 五人もの付き添いの侍女に周りを囲まれ、さらにその周りにものものしい装備の近衛兵たち。


たった一人の女の子をこれだけの大人が取り巻き、守ろうとすることを、このときのリーラはまだ当たり前だと思っていた。



 白い花は兄のためだった。


燃えるような赤い髪の兄王子。


金の髪の王家一族の中で一人だけ赤い髪の王子。


その赤毛の理由を、城の者のうわさ話からリーラも知っていた。


半分は下賎の血だと、そんな言葉を、リーラはいつも不思議な気持ちで聞いていた。


下賎とは何なのか。

――強く、賢く、明るく優しいこの兄の、どこが卑しいというのか。


自分も、父王も、第二王子である二人目の兄も、王となるのはラシェル王子ただ一人だと信じているのに。



――俺たちが民より良い暮らしをしているのは、民の暖かな暮らしを守る者であるからだ。民の生活を守ることができなければ、王族たる資格はない。