ウィオンの神殿は緑に満ちている。



 緑は自然の色。


ひとを、あらゆる命を育む色。


それは母なる神の慈愛の色だからだ。


ウィオン人が緑の髪をもつのは、創生神話において母なる神が最初に産んだ人間であるからだという。



 石造りの建物の外側と言わず内側にさえ、まるで森の中かと見紛うほどに様々な木々、植物が自生している。


大きく枝を伸ばす木々でさえその手が届かないほどに高い真っ白な壁は一面を蔦が覆う。


見上げると天井はなく、青々とした夏の空が丸く切り取られている。


神殿というよりも円形の箱庭に近い、その小さな森の中央には、外周の壁を越えるほどに背の高い樫の木が、まるで女王のように堂々とそびえ立っている。