「結月ちゃん、お弁当作ったんだけど……」
毎朝、玄関で靴をはいていると、おばさんがお弁当を手にしてキッチンから出てくる。
もちろん私は無視。
聞こえていないかのように、靴をはいて玄関を飛び出していくのがいつもの光景。
どんなに拒絶されても、あの人は毎朝、お弁当を作る。
そんなにポイント稼ぎをしたいのかな。
お弁当でつられるような子どもじゃないし。
憂鬱な一日がこうやって始まってしまうんだ。
「結月、購買行くの?私も行くから一緒に行こー」
4時間目が終わり、引き出しの中にすべてしまい終えた後、財布を手にして立ち上がった私。
教室を出ようとしたところで、恵茉に声をかけられた。
「恵茉、今日はお弁当じゃないの?」
「寝坊して朝練ギリギリだったから、お弁当作る暇がなくて」
「自分で作ってたんだ?お母さんは?」
「うち離婚して母子家庭なんだけど、夜勤の事が多くて食事担当は私だから」
「そっか……」
恵茉が毎日持ってくるお弁当は自分で作ってたんだね。
食事担当を引き受けてるなんて偉いなー。