サーシャは動揺を隠せないでいた。
身体中から自分の体温が一気に抜けていくように冷たくなる感覚。
なのに額からは汗がつつ、と流れていく。

「ち、違うわ・・・私はサーシャよ・・・」

今出せる声を振り絞って否定をする。
が、声も震えて出てしまう。

「・・・リリィ。私を忘れたのか?」

「なんのこと・・・」

目の前の騎士は目にかかった髪を手で後ろに流し、顔をはっきりとサーシャに見せた。
サーシャはその顔を見て、はっと気付く。

もうすっかり成熟した青年だったが、幼い頃の面影は少なからず残っていた。

切れ長の目。
通った鼻筋。
少し薄めの唇。

蘇る過去の記憶。
サーシャの手がかたかたと震えた。

・・・・・ディル・・・・・!