二月の二十七日。
今日は、和君の卒業式だ。
「ーーー卒業生代表、水谷和哉」
体育館のステージの上に、堂々と立つ和君の姿。
その姿がかっこよくて、たくましくて、私はただ和君を見つめた。
和君は、都内の大学に入学することになっている。
この高校からは、電車で30分くらいの場所にある大学で、国内トップの学力を誇る大学だ。
そこの法学部に、特待生として合格した。
本当に凄いな…
この人が自分の恋人だなんて、未だに夢のようだ。
「和哉君、かっこよかったわねー」
「あれはまたファンが増えたなー、っつっても、もう卒業だけどさ」
2人の言葉に、私は「えっ」と反応してしまう。
「モテる彼氏を持つと大変ね〜」
「あんなに愛されてたら、不安にもなんないだろー。和哉君、マジで雪命!って感じだもんな」
冗談っぽく楓ちゃんがそう言った時、背後から何者かに抱きしめられた。
「雪命だけど…悪い?」
すぐにわかる、和君の匂い。
見せつけるようにそんなことを言うものだから、顔に熱が集まるのがわかった。
な、なんてこと言うの和君…は、恥ずかしいよ…!
「うわあーアッツアツ。和哉君ほんとキャラ変わったわねー」
「前までは冗談とかぜってー言わなかったのにな!」
「冗談じゃないし。俺ほんとうに雪命だから」
私を抱きしめたまま、和君はにこっと笑った。