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「何があっても、君を守る。だから──」


 これは、夢だ。直感的に僕はそう思った。でも、前にも同じセリフを聞いたことがあるような気がする。

 柔らかそうな髪、真剣な顔付き、僕の両目を真っ直ぐに見つめてくる、綺麗な瞳。部分的に頭の中をよぎる、夢の中の数々。でも、どれもが懐かしいと思っていて、僕はそれらに嫌悪感を抱いていない。

 目の前にいる〝誰か〟。
 誰なのか思い出せない、〝キミ〟。

 次の瞬間、君が何を言うのか、僕には分かる。


「だから──」


 自然と、お互いにその言葉を紡ぐ。


「〝生きて、待っていて〟」


 ねぇ。

 ──君は、だれ?


「……と……やま……」


 まどろむ意識の中。誰かの声が聞こえる。僕を優しく包み込むその声は、次第に大きくなっていく。


「まと……やまとく……」


 同時に、何を言っているのか徐々に分かってきた。

 〝大和くん〟?
 僕のことを、呼んでいる……?

 一体だれが、僕を──。


「大和くん!」

「!」


 ハッキリと聞こえた、僕の名前を呼ぶ声。その声に導かれてバッと両目を開けると、すぐ目の前に焦ったような表情をうかべる、黒月くんの整った顔があった。

 ビックリして反射的に上半身を起こす。刹那、ズキッとした痛みが後頭部を走り、頭を抱え込むように丸まる。


「大丈夫かい?!」


 僕の顔を覗き込む黒月くんの顔は、不安に塗れている。「大丈夫だよ」と、安心させるようにそう言いながら微笑みかけて……──はたと気づく。周りの様子がおかしい。辺りを見渡し、言葉を失った。