次の日の朝。洋子さんと臣さんは葬式の話をしていたけれど、悲しみのどん底に浸っている僕にはよく聞こえなかった。何より、本当に風子が死んだのだと思い知らされたくなくて、聞きたくはなかったし……。

 学校には行かないといけないため、重い身体を引きずってカバンを持ち、家を出た。いつもの習慣で「いってきます」と挨拶をしたけれど、中から挨拶が返ってくることはなかった。

 学校に近付くにつれて、風子が通っていた猫山(ねこやま)中学校の生徒たちや、僕が通う猫塚(ねこづか)高校に通う生徒たちの姿が多くなる。

 人が多くなるにつれて、僕に注がれる視線が増えてきているような気がする。昨日、全国に向けてテレビで報道されちゃったくらいだしな……僕に視線を向ける人が多いのは、当然のことなんだろうな。


「犬飼家の妹、人狼に襲われちまったんだって」

「かわいそー」


 僕のことを見ながらひそひそと話している人たちが多いため、そっと耳を傾けてみると、そんな言葉ばかりだ。哀れみ。同情。今の僕にとって、これっぽっちも嬉しくないものばかり。

 直接的に慰めの言葉をかけてくる者など、もってのほか。いるわけがない。まるで腫れ物を扱うかのように、遠くからそういう視線を向けてくるだけだ。

 そもそも、僕には一般的に〝友達〟と呼ばれる者がいない。もともとそれらしい人達などいなかった。

 この大人しくて人見知りの性格のせいだろう。積極性があるクラスメートのみんなとは馴染めず、ずるずるとここまできてしまった。だからこそ、風子にはいつも「鈍臭い」と言われていたのだろうけれど……。