部活のあと、1度は片づけたボールかごを引いて、倉庫から出る。



「李穂? 帰んねぇのか?」

「明日は1年生の力量をはかる部内の試合だしな。
久しぶりに手入れでもするわ」

「そうか」



いつも残って練習する大成の邪魔にならないところにボールを出す。



ボールがないと、バスケはできねぇ。

そんで、簡単に買い換えるものでもないから、ボール磨きはすごく大切なんだ。



マネージャーはあたしだけじゃないし、ひとりでやる必要なんてないんだけど……。

考えごとには、これが1番。

手伝います、との言葉には断った。



ボール磨き用の布に専用のクリーナーを吹きかける。

丁寧にしっかりとこすっていく。



作業を黙々と進めながら、考えるのはもちろん────尚のこと。



『返事は今すぐじゃなくていいんで。
だから、おれのこと1回、真剣に考えて下さい』



約1週間前、そう言ったあいつの顔は赤くて。

あたしの顔も……赤くて。