ケータイ小説 野いちご

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

初夏
―百合の咲く丘

第一章 初夏




第2節 百合の咲く丘












「ツルさん、こんにちは」





佐久間さんはあたしを連れて、『鶴屋食堂』という小さな看板の出ている古民家みたいな建物に入った。





戸口ののれんをくぐって佐久間さんが中に声をかけると、50歳くらいのおばさんが奥から出てくる。




うわ、この人もコスプレ……?




着物の上に白い割烹着。




古いドラマに出てくるお母さんの格好。





店の中もなんかすごく質素っていうか、古びているっていうか………。





呆然として観察していると、佐久間さんがあたしの背中を押した。






「この子、百合っていうんですが、そこで暑さにやられて倒れていたんです。


少し休ませてあげてもらえないですか?」





「あら、大丈夫かい?」






ツルさんと呼ばれた割烹着のおばさんは、慌てた様子であたしに駆け寄ってきた。






「この暑さだもんねぇ、まったく参っちゃうよねぇ」






そう言いながらあたしを座敷に座らせ、湯呑みに入った水を出してくれた。





………う、ぬるい………。




なんで氷入れてくれないんだろ………。






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