春休みも、後半となったその日。



「お嬢さま、お手紙が届いてますよ」



部屋で休憩していたら、沙代さんが、シンプルな空色の封筒を持ってきてくれた。

沙代さんは、わたしが生まれる前から、うちにいるお手伝いさん。

ママよりは年上で、おばあちゃんよりは若い。

お料理が上手で、くるくる、くるくる、いつも笑顔で何かをしている。

わたしは、優しくて明るい沙代さんが大好きだ。

うちは、ママも仕事をしているから、家のことは全部、沙代さんと、もう一人の通いのお手伝いさんの2人がする。



「ありがとう」



誰かしら?



と、封筒を受け取り差出人を見ると、1年ぶりくらいに見る名前が書かれていた。



驚いて、まじまじと、何度もその名を見返してしまった。



「裕也くん」



早速、封を切って、中から手紙を取り出した。