夜の闇の中を、灯りも持たずに駆け抜ける。


息が切れそうになってきたころ、城壁の前で警護をしている新撰組隊士たちの姿が見えてきた。


「沖田じゃないか。どうした?」


浅葱の羽織を着てきた俺の姿を見つけ、ちょうど門前にいた斉藤に呼び止められる。


「斉藤……。楓が、楓が来なかったか?城の中へ入らなかったか?」


斉藤にしか聞こえないように注意しながら、小さな声でたずねる。


すると彼は、眉を寄せて首をかしげた。


「はて、楓がどうして城の中へ?」


どうやら、門から入った様子はないようだ。


「すまん、説明すると長くなる。土方さんはどこだ?」


とにかく、土方さんに知恵を貸してもらおう。


あの人なら……。


背中を返すと、「そういえば」と斉藤がつぶやいた。


振り返ると、彼は俺に近づき、小声で知らせる。