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「お、おかえりー!」


「人間のくせに遅いじゃない!ふんっ、マグロ丼たべちゃおうって何回も……柚邑?」


明るすぎる異界の驪さんの異界で、2人が犬みたいに出迎えてきてくれた。

口々に喋り出して、俺の様子がおかしいことに気付いた。



「柚邑…?何かあったのか?」

「苑雛さまに何かされたの?いじめられたの…?」


顔を覗き込んでくる二人の視線から逃れたくて、無理やり声を出した。



「なんでもないよ…。あの、ちょっと霊力減って疲れちゃったから寝るね」


随分とうそが上手くなった。


女になったおかげだろうか。




「霊力使うようなことしたのか!?あんにゃろー…私の柚邑をこき使いやがって。後で文句言っちゃる」

「うえ!?柚邑はあかね様の…!?」

「あ、悪ぃ悪ぃ。誤解生むよーな発言しちゃったな、妬いたか?」

「な、何を仰ってるのか理解できませんよアカネ様!」


楽しそうにお喋りをする彼女らを突っ切って、真っ先に寝床にしてる黒庵さんの部屋へ行く。

灯りがついていく廊下に、部屋。

幻想的な風景も飛ぶほど、俺は急いていた。


何にかはわからない。


だけど、なんでかアカネたちとはいたくなかった。


アカネだけじゃない、苑雛くんも、鸞さんも。


できることならこの異界から抜けて、家に戻りたかった。


何も知らないでずっと安穏とした日々で生きていたかった。




どうしようもなく、全てから逃げたかった。