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ささくれ
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いつか、で終わる恋

総文字数/1,606

恋愛(学園)1ページ

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私は人と距離を取ることで、世界と折り合いをつけてきた。期待しなければ失望もしないし、関わらなければ傷つく理由もない。教室のざわめきや、楽しそうに笑う声は、いつも少し遠い場所の出来事だった。 だから高校に入学した日も、特別な感情はなかった。ただ同じような日々が、少し形を変えて続いていくだけだと思っていた。 けれど、名前を呼ばれた。 それだけで、確かに世界がこちらを向いた気がした。無邪気な笑顔は眩しくて、信用するには危うく、拒むには優しすぎた。踏み込まれることを恐れながらも、完全に背を向けることができなかったのは、その笑顔が嘘を含んでいないように見えたからだ。 ここは、まだ恋ではない。 ただ、閉じていた心に、初めて差し込んだ光の話だ。
夕焼けの下で、もう一度

総文字数/6,846

恋愛(学園)3ページ

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   佐々木悠にとって、齋藤葉月は「よく笑う人」だった。  同じクラスにいて、廊下ですれ違えば軽く会釈する程度。会話らしい会話は、ほとんどしたことがない。  それでも目に入った。  誰かに話しかけられれば立ち止まり、困っていれば自然に手を差し伸べる。その距離感が、佐々木には少し眩しかった。 「齋藤ってさ、いい人だよな」  前の席の男子がそう言った時、佐々木は曖昧に頷いた。  “いい人”という言葉が、褒め言葉なのか、逃げなのか分からなかったからだ。  ある日の放課後、教室に忘れ物を取りに戻ると、窓際に齋藤が一人で立っていた。夕焼けが差し込み、教室は静まり返っている。 「あ、えっと……忘れ物?」  声をかけられ、佐々木は少し驚いた。  思ったより、声が柔らかかった。 「うん。ワーク」 「そっか」  それだけの会話。沈黙。  気まずさをごまかすように、佐々木は口を開いた。 「……齋藤って、誰にでも優しいよね」  言ってから、少し後悔した。  彼女は一瞬だけ視線をこちらに向け、すぐに窓の外へ戻した。 「そう見えるだけかも」  それ以上、話は続かなかった。  佐々木は「変なこと言ったかな」と思いながら教室を出たが、その理由までは考えなかった。  数日後、クラスで誰かの噂話が出た時、佐々木は軽い調子で否定的な言葉を口にした。  その瞬間、齋藤がこちらを見た。ほんの一瞬、眉が動いた気がした。  何も言われなかった。  けれど、その視線だけが、なぜか心に残った。  まだ知らない。  彼女が、どんな言葉を大切にしているのか。  自分の言葉が、どこまで届いてしまうのかを。  けれど、すでにいくつかの言葉は、静かに積み重なり始めていた。

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