机に向き直って、プリントに向かったとき。

さっと、隣から腕が伸びてプリントが奪われた。


すぐに右隣を見ると。


プリントを片手に丹羽くんが、こちらを向いていた。


「い、いくらなんでも、プリントを取るのはひどいよ。」


取り返すため、伸ばした右手は。
ぱしっと、丹羽くんの左手に掴まれて。

プリントには、届かない。


「バカとは言ったけど、教えないとは言ってない。」


「…え?」



「戸塚はほんとバカだな。
…仕方ねーから教えてやるって言ってんの。」



自習中のざわざわとした、クラスの雑音は耳に入らなくて。


丹羽くんの、低めの柔らかい声だけが、すっと聞こえた。

…掴まれた右手があつい。